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「戦争と図書館」

図書館九条の会世話人 大澤正雄

図書館記念日(2005年4月30日)

筆者談:
 4月30日は図書館記念日です。戦前の図書館記念日が「帝国図書館長が天皇に「御進講」を行ったことを記念」して定められ、しかもそれが昭和六(1931)年であったことは戦争と図書館の運命的なできごとといえるのではないかと思います。
この年は日本による満州(中国東北部)侵略が行われ、15年にわたる日中戦争の端緒を開くことになりました。
この年の2年後、昭和8年(1933)年は戦争に向けての文化的地ならしが行われます。この年のことについては次号で述べます。
あれから74年、奇しくも図書館記念日の前日の29日を「昭和の日」にかえるという「戦争に対する天皇の責任を隠蔽する」法案が国会を通過しました。このことは、中国、韓国をはじめとするアジアの民衆に日本が先の大戦の責任を抹消しようという意図を持たせることになります。
では「戦争と図書館」に入ります。

記念日のいわれ

現行の「図書館記念日」は、昭和四六年(1971)年、岐阜市で行われた第五十七回図書館大会で、四月三十日と決められた。これは、図書館法が制定された昭和二十五年四月三十日にちなんだものである。しかし、戦前は四月二日であった。しかもこの記念日は、昭和六年(1931)年四月二日、松本喜一帝国図書館長が天皇に「御進講」を行ったことを記念して制定されたものであった。
 同館長の語るところによれば「当日宮内省差廻しの自動車にて宮中に参内し、正二時御学問所に於て拝謁仰付けられ、天顔に咫尺(しせき)し奉りて『図書館の使命』と題して、一時間余に至る御進講を奉仕するの栄誉を荷うたのである」という。
氏は、この栄誉は「御進講者一人の栄誉たるのみならず實に我が図書館界が蒙れる空前の光栄たるべきものを思ひ、これを斯業の開拓に全生涯を捧げたる諸先輩、並びに我が同僚諸兄の多年の努力が、畏くも天聴に達したる結果に外ならない」として、そのゆえにこの記念日を制定した、とその由来を『図書館雑誌』で述べている(松本喜一「図書館記念日を迎えて」昭和八年四月号)。
昭和六年五月、東北・北海道の図書館連盟は、四月二日を以て「図書館デー」となすことを決議、翌七年東北六県及び北海道でこれを実施。さらに同年五月、同連盟は東京で開催された第二十六回全国図書館大会に、「四月二日を図書館記念日と定むる件」を提案した。大会は、満場一致でこれを可決した。

制定の政治的背景

大会当日、提案者田中敬氏の説明はつぎのようであった(大会記録による)。「聖上陛下が、我国図書館事業に大御心を傾けさせられましたのは我国図書館界に特筆さるべき事と思ふ。故にこの日を記念日と定め東北に於いてはその第一回を去る四月二日に催したのであるが非常に成功であったように思ふ。就いては『デー』を『記念日』と改めることの御注意もありし故、左様訂正してこのことを全国的にいたされ度く満場の御賛成を得て、大御心の万一に副ひ奉りたいと思ふ次第である」
これに対し、水野銀治郎氏(西宮市立図書館司書)は「図書館週間」との関連を問い、本橋清氏(千葉県立図書館司書)も同趣旨の質問を試みた。また竹内善作氏(大橋図書館主事)は、「四月二日は小学校の入学式に当り差支あるのではないか」、また本橋氏も「記念日とするのには賛成であるが、学年始めで学校側及青年訓練所等は非常な多忙な時である。この時読書奨励等の図書館事業を行うことは考えさせていただきたい。記念日には賛成であるが内容如何によって考えねばならぬ」と、いずれも記念日には消極的な意見をのべたが、結局、山中樵氏(台湾総督府図書館長)、辻尚邨氏(川越市立図書館長)らの賛成意見を受けて、今井貫一議長(大阪府立図書館長)はつぎのようにしめくくった。
「他に意見なきや。今、山中君、辻君より賛成意見の発表あり、本橋君も仕事の内容につきて意見ありたるも大体賛成と認める(拍手)。賛成の方は挙手を乞う(満場一致可決)。事重大なれば、全員起立して敬意を表したい(全員起立)
」(大会議事録による)
 おそらく、当時としては、この種の提案と強引とも見える議長の採決に対し、正面切って反対することは、ほとんど「天皇の官吏」であった図書館員には、不可能であっただろう。(P.48〜50)

 

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