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「戦争と図書館」

図書館九条の会世話人 大澤正雄

 

戦時中の児童図書館 (2005年9月4日)

一九三三(昭和八)年、図書館令の大改正があった。
ナチスが焚書を行い、滝川問題の起きた年である。
この法規の改正は、表面上、図書館員の待遇改善と図書館復興をうたっていたが、その真のねらいは、中央集権的な文化統制であった。中央図書館制度を制定し、都道府県立図書館が、管下の図書館を統制し、かつすべての図書館設置を認可制度にするものであった。
それまで、私立図書館は、開申のみで設置できたがこれ以後すべて、官庁の認可を得なければ設置できないようになった。
当時、検事局では、青年団や教員の文庫活動に赤化の徴候があるとして、これに目をつけていたが、児童図書館活動でも、一九三二(昭和七)年、豊島区西巣鴨にあったプロレタリア〔児童〕図書館の検挙が行われた。
これは、城北労働者が、子どもたちに「桃太郎などの話をおりこんで」「児童赤化」をはかっていたというかどであった。戦時中の言論出版統制については、諸書でふれられているので、ここでは述べないが、「書籍館」以来、日本の公共図書館は、教化の機関であり、かつまた治安対策の面からも考慮されてきた。
戦前、図書館には、特高警察や憲兵が来館して閲覧者の読書調査を行っていたことは、各種の図書館史の中にも見えている。
一方内務行政の面から、児童図書の検閲が行われた。
一九三八(昭和一三)年、即ち、中国との戦争が開始された翌年、内務省は、児童書の全面的向上を目的として、児童図書の統制に乗り出した。
内務省警保局図書課による「児童読物改善に関する指示要綱」(昭和一三年一〇月)がそれであった。
内務省は、これらの要綱を根拠として、児童読物の検閲を行い、発売禁止処分などを行った。
当時、内務省検閲課の上月景尊は、禁止処分にした何冊かの本をつぎのように例示した。

歴史物語では、一は古事記に取材したる『神の国日本』と題したる建国神話にして、我国の建国神話の直訳を、児童に興味的に知らしめんとする意図より、現代的な表現を使用して、皇祖神の皇位継承を繞る御兄弟神の血腥き葛藤、並天孫神の女性を繞りての愛欲、猜疑等の物語りを非常識、無責任に描写してある点、次は『楠木正成の精神』と題したる伝記物語にしてその活躍せる吉野朝前後の時代思潮を中心に、朝廷と武家との対立より、南北両統の皇位継承を繞る葛藤経緯、及びその誘因、並建武中興の破綻迄の混屯としたる時代を、興味的に知らしめんとするの意図より、皇室の秘事、武家の不敬、専横等の史実を忠実に余りにも具体的に取扱いたる点、いずれもこれを思想の固定せざる児童に与へるには、崇高なる我皇室及国体に対し徒らにその尊敬感を動揺せしめ、且我国体に対する歴史感を誤らしむる虞ありとして取締りたるものである。
さらに少年少女小説(単行本)の「児童たけくらべ」なる図書を取りあげ、つぎのように述べている。
 明治時代の閨秀作家樋口一葉原作の『たけくらべ』を児童読物風に簡略、修正して取扱ひたるものにして、内容は、束京の盛り場所、浅草の一角(吉原遊廓付近)といふ特殊な下町を背景としたる環境裡の、少年少女達の生活を主人公なる「美登利」(遊女の妹)を中心に描写したるものにして、その奥書の『主人公たる少女「美登利」の漸く女たらんと成長してゆく経路や、その時々の事件に逢着して、種々に変化する心理など、云々』といふが如く、その特殊社会に生活する子供達の生活描写が、読者に対して早熟にして、且卑猥なる印象を与ふる虞ある点、風教上害ありとして。(上月景尊「児童図書検閲について」『児童文化 上』昭和一六年所収)
内務省の検閲官は、以上のような検閲を行ったうえ、つぎのように述べている。
 現下の児童出版物の低俗さは、結局、著者並びに作家の文化的見識の低さの反映である。
戦時下の検閲の考え方がここに如実に示されていて興味深い。
(清水正三『図書館を生きる』日本図書館協会 1995.10,P.102-104)

**新聞切り抜き********************
全国へ呼び掛ける
 童心赤化運動
  桃太郎の話も織り込んで
     プロ図書館の怪組織
巣鴨署特高係では、数日前から豊島区西巣鴨四の五〇七プロレタリア図書館並に城北労働者文化クラブ責任者近江谷長司(三一)、妻そで(二八)、平野一郎(二一)、プロレタリア技術家同盟芳賀靱(二五)、BC同盟員大町三子(二七)、大同製本職工福田慎吾(二四)外十五名を検挙取調べ中であるが、かれ等は本年五月以来ビヨニールの養成につとめ同図書館内には滑り台、ピンポンその他遊戯器具を備えつけ、また童話会、紙芝居などを催して付近の予供等を集めて意識づけていたもので、更に各地方の日本作家同盟支部と連絡をとり全国ビヨニール聯盟を結成すべく最近活発な活動をはじめ本月一日長野県支都作家同盟上諏訪青年聯合会長宮坂甚造(二四)が地区拡大聯合大会開催を目的に連絡のため上京、労農救援会本部員児童部主任池田正一(三一)等と極秘裡に会合し同県に送るべきオルグの選定中検挙されたもので、同署では検挙と同時に児童赤化の教材その他不穏文書多致を押収した。この教材中には桃太郎の話などを織り込んでる巧妙なものがある。(昭和八年十一月十一日、東京日日新聞)『戦争と図書館』P.152

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私立図書館に対する統制 (2005年8月1日)

図書館令改正のねらい (2005年7月1日)

昭和八(一九三三)年(2005年6月1日)

図書館記念日(2005年4月30日)

滝川事件と京都古書籍組合の抗議(2005年4月1日)

書庫から発見された新聞切抜帖(2005年2月26日)

迫りくる戦争と図書館 (2005年2月3日)

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